

東京都の経営事項審査の専門家。経審の手続きはもちろんのこと、制度や仕組みだけでなく東京都の独特のルールにも精通。クライアントが、総合評定値P点を100点以上アップしたり、2億円を超える東京都の公共工事を受注するなど、数多くの成功実績を誇り、お客さまからの信頼も厚い。「はじめての方のための経営事項審査入門書」を出版。
経営事項審査(経審)で審査されるX1・X2・Y・Z・Wの5つの項目のうち、唯一、行政ではない民間分析機関への申請が必要になるのが、Y(経営状況分析)です。Y評点(経営状況分析の点数)は、総合評定値P点のうち0.20のウエイトを占めます。財務諸表の数字(決算内容)そのものが評価される点が特徴です。
Y点は、8つの指標を用いて算出されます。本記事ではY点が算出される仕組みについて、詳しく解説していきたいと思います。
なお、X1・X2・Y・Z・Wの5つの項目の優先順位やP点を上げる方法については、「経営事項審査(経審)の点数を上げる方法【優先順位】を専門行政書士が解説」で解説しています。
この記事の要点(まとめ)
- Y点を算出するための手続き(経営状況分析)は、登録経営状況分析機関に申請する必要がある
- Y点は8つの財務分析の指標に基づいて、算出される
- 8つの指標は、重要度(寄与度)が異なるため、優先順位をつけて対策をする必要がある
- 8つの指標は、「負債抵抗力」「収益性・効率性」「財務健全性」「絶対的力量」の4つに分類される
- Y点の最高点は1595点で、最低点は0点
- 審査対象事業年度の月数が12カ月に満たない場合には、0点になる可能性がある
【1】Y評点とは|経営状況分析という手続き
経営状況分析とは、経営事項審査を受ける前に必ず経なければならない手続きです。国から登録を受けた「登録分析機関」に財務諸表を提出し、分析を受けて経営状況分析結果通知書を受領します。その経営状況分析結果通知書に記載されているのがY点です。
登録経営状況分析機関の一覧は、以下の通りです。
| 登録番号 | 機関の名称 |
|---|---|
| 1 | (一財)建設業情報管理センター |
| 2 | (株)マネージメント・データ・リサーチ |
| 4 | ワイズ公共データシステム(株) |
| 5 | (株)九州経営情報分析センター |
| 7 | (株)北海道経営情報センター |
| 8 | (株)ネットコア |
| 9 | (株)経営状況分析センター |
| 10 | 経営状況分析センター西日本(株) |
| 11 | (株)NKB |
| 12 | (株)建設業経営情報分析センター |
(国土交通省の公式ホームページ「登録経営状況分析機関一覧」参照)
【2】Y評点の計算式
Y評点は、次の2段階の計算式で求められます。
| ステップ1 | A=-0.4650×①-0.0508×②+0.0264×③+0.0277×④+0.0011×⑤+0.0089×⑥+0.0818×⑦+0.0172×⑧+0.1906 (小数点以下2位未満の端数があるときは、四捨五入) |
|---|
| ステップ2 | Y=167.3×A+583 (小数点以下の端数があるときは、四捨五入) |
|---|
なお、Y点の最高点は1595点、最低点は0点です。
■専門家の視点■
Y評点において大事なのは、上記の計算式を覚えることではありません。上記の計算式よりも、もっと大事なのは、経営状況分析の指標となる8つの項目の中には、優先順位があるという点です。もっと、極端に言うと、「無視してよい項目がある」「必ずチェックした方がよい項目がある」というように、優先度が異なるのです。
「経営事項審査でよい点数を取りたい」というまじめな人ほど、計算式を覚えようとしますが、ここでは、いったん上記の計算式のことは忘れて、次章以降の8指標の中身と優先度について、よく理解するように努めてください。
【3】経営状況分析における8つの指標と4つの属性
経営状況分析における8つの指標
経営状況分析においてY評点を算出するための指標は、以下の8つです。
| 記号 | 指標 | 算出式 |
|---|---|---|
| ① | 純支払利息比率 | (支払利息-受取利息配当金)÷売上高×100 |
| ② | 負債回転期間 | (流動負債+固定負債)÷(売上高÷12) |
| ③ | 総資本売上総利益率(※) | 売上総利益÷総資本(2期平均)×100 |
| ④ | 売上高経常利益率 | 経常利益÷売上高×100 |
| ⑤ | 自己資本対固定資産比率 | 自己資本÷固定資産×100 |
| ⑥ | 自己資本比率 | 自己資本÷総資本×100 |
| ⑦ | 営業キャッシュ・フロー | 営業CF÷1億(2年平均) |
| ⑧ | 利益剰余金 | 利益剰余金÷1億 |
※総資本(2期平均)が3,000万円未満の場合は3,000万円とみなして計算します。
8つの指標は、会社の何を見ているのか?
①~⑧までの8つの指標が何を見ているか?については、以下の表を参考にしてください。
| 指標 | 属性 | 何を見ているか |
|---|---|---|
| ①純支払利息比率 ②負債回転期間 |
負債抵抗力 | 借入への依存度・返済負担 |
| ③総資本売上総利益率 ④売上高経常利益率 |
収益性・効率性 | 資本を使ってどれだけ稼げているか |
| ⑤自己資本対固定資産比率 ⑥自己資本比率 |
財務健全性 | 財務基盤の安定度 |
| ⑦営業キャッシュ・フロー ⑧利益剰余金 |
絶対的力量 | 会社の規模そのもの(絶対額) |
【4】8つの指標におけるY評点への寄与度
実は、経営状況分析で審査の対象となる①~⑧の指標がY評点に与える影響(寄与度)は均一ではありません。この寄与度が、均一であれば、①~⑧までのすべての指標が向上するように、均等に対策することが考えられます。しかし、各指標によって寄与度が異なる以上、より寄与度の大きい指標に力を入れて対策を行うのが、効率のよい経審対策ということができます。
| 記号 | 指標 | 寄与度 |
|---|---|---|
| ① | 純支払利息比率 | 29.9% |
| ② | 負債回転期間 | 11.4% |
| ③ | 総資本売上総利益率(※) | 21.4% |
| ④ | 売上高経常利益率 | 5.7% |
| ⑤ | 自己資本対固定資産比率 | 6.8% |
| ⑥ | 自己資本比率 | 14.6% |
| ⑦ | 営業キャッシュ・フロー | 5.7% |
| ⑧ | 利益剰余金 | 4.4% |
例えば「⑦営業キャッシュ・フロー」は5.7%、「⑧利益剰余金」は4.4%というように、⑦と⑧を合計してもY評点に与える寄与度は10.1%にしかなりません。一方で、「①純支払利息比率」は29.9%、「③総資本売上総利益率」は21.4%というように、①と③の上位2個を合算すると51.3%にもなります。
このように、Y評点を細分化し、①~⑧の指標の寄与度まで確認すると、
- 優先順位が非常に高い→①純支払利息比率、③総資本売上総利益率
- 優先順位が高い→⑥自己資本比率、②負債回転期間
というように、区分することができます。
なお、「経営事項審査(経審)の点数を上げる方法【優先順位】を専門行政書士が解説」のページでは、経営事項審査(経審)の点数を上げるために何ができるか?という観点から、Y評点における「①純支払利息比率」「③総資本売上総利益率」「⑥自己資本比率」の3つについて、詳しく解説しています。点数を上げるための具体的な対策を知りたい方は、ぜひ、参考にしてみてください。
■専門家の視点■
このようにY評点において審査の対象になる①~⑧の指標は、優先度が異なるため、やみくもに対策を行うのではなく、寄与度の大きい「①純支払利息比率」や「③総資本売上総利益率」に絞って対策を行うのが、効果的ということができます。
また、Y点は、「決算日時点の財務諸表」で機械的に算出される点数です。そのため、決算後に慌てて対策しても今回の経審には反映されません。次期の決算に向けて、期中から「借入をどう圧縮するか」「総資本を必要以上に膨らませていないか」を意識した資金繰りを行うことが、実質的なY評点対策になります。
【5】経営状況分析の申請の流れ
経営状況分析は、おおよそ次の流れで進みます。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①分析機関の選定 | 全国の登録経営状況分析機関から1社を選ぶ |
| ②財務諸表の提出 | 直前2期分の財務諸表と分析申請書を提出 |
| ③分析・算出 | 分析機関がY点を算出(数日〜2週間程度が目安) |
| ④結果通知書の受領 | 「経営状況分析結果通知書」を受領し、経審申請に使用 |
分析手数料は機関によって差があり、13,600円程度が目安とされています。申請から結果受領までの期間や、追加でシミュレーションレポートを提供しているかどうかも機関選びのポイントになります。
【6】経営状況分析のよくある質問
■専門家の視点■
法人設立後、1年が経過していない時点で経営状況分析を受ける際には、注意が必要です。なぜなら、「審査対象年の間に開始する事業年度に含まれる月数が12カ月に満たない場合、①②については最大値を、③~⑧については最小値を取るものとして算定する」とされていて、Y点が0点になるからです。
法人設立後1年を経過していない会社の場合、Y点が0点になってもよいので経営事項審査を受けるか?それとも経営事項審査を受けるタイミングを翌期以降にずらすか?の判断が必要になります。
【7】まとめ
会社の規模が審査の対象となるX1(業種別完成工事高)や、技術職員の人数が評価の対象となるZ(技術力)と、違って、財務諸表の内容そのものが審査の対象となるY(経営状況分析)は、中小企業にとっても比較的対策のしやすい審査項目であると言えます。
とくに優先度の高い「①純支払利息比率」「③総資本売上総利益率」を重点的に対策し、余裕があれば「②負債回転期間」「⑥自己資本比率」も定期的にチェックしていくことによって、点数アップを望むことができる審査項目です。




