

東京都の経営事項審査の専門家。経審の手続きはもちろんのこと、制度や仕組みだけでなく東京都の独特のルールにも精通。クライアントが、総合評定値P点を100点以上アップしたり、2億円を超える東京都の公共工事を受注するなど、数多くの成功実績を誇り、お客さまからの信頼も厚い。「はじめての方のための経営事項審査入門書」を出版。
経営事項審査(経審)の総合評定値P点は、X1・X2・Y・Z・Wの5つの審査項目から構成されています。この5つの審査項目のうち、もっとも配点(ウエイト)が大きいのがX1評点(業種別完成工事高)です。
そのため、「売上(完成工事高)を伸ばせば点数が上がる」とシンプルに考えがちですが、実際には
■ 42段階の区分に分かれたテーブル表によってX1評点が算出されること
■ 2年平均と3年平均のどちらかを選択すること
■ 業種間の振替が可能なこと
など、押さえておくべき仕組みがいくつもあります。
なお、X1評点を含む5つの評点の全体像や優先順位については、専門ページ(「経営事項審査(経審)の点数を上げる方法【優先順位】を専門行政書士が解説」)で解説していますので、本記事ではX1評点そのものを、より詳しく掘り下げていきたいと思います。
この記事の要点(まとめ)
- X1評点は、業種ごとの完成工事高(元請・下請の両方)を審査の対象にしている
- X1評点は、業種別の完成工事高を1,000万円未満〜1,000億円以上の42区分に分けたテーブル表の計算式に当てはめて算出する
- テーブル表の計算式は、完成工事高が高くなるほど、X1評点の伸び率が鈍化するように設計されている
- 完成工事高は2年平均・3年平均のうち、自社に有利な方を選択できる(Z評点の元請完成工事高と選択年数を揃える必要がある)
- X1評点の点数幅は397点(下限)〜2,309点(上限)
【1】X1評点とは、何を評価する項目か?
X1評点は、経営事項審査を受ける業種ごとの完成工事高を数値化する評価項目です。会社の「経営の規模」を反映する指標と言われています。
| 経審を受ける業種 | 完成工事高 | X1評点 |
|---|---|---|
| 内装工事 | 3,000万円 | 602 |
| とび工事 | 1億5000万円 | 756 |
上記のように、内装工事の完成工事高が3,000万円の場合、X1評点は602点になります。また、とび工事の完成工事高が1億5,000万円の場合、X1評点は756点になります。このように、X1評点は、経営事項審査を受ける業種ごとの完成工事高を根拠に算出されます。評価対象になる完成工事高は、その業種の完成工事高すべて(元請と下請の両方を含む。公共工事と民間工事の両方を含む。)です。
なお、X1評点は、総合評定値P点を算出するための計算式「P=X1×0.25+X2×0.15+Y×0.20+Z×0.25+W×0.15」において、Z評点(技術力)と並んで、最大のウエイト(=0.25)を占めていてます。
【2】X1評点の計算方法とは?
42区分の点数テーブル表
X1評点は、業種別の年間平均完成工事高を「点数テーブル表」の計算式に当てはめて算出します。このテーブル表は1,000万円未満から1,000億円以上までの42区分に分かれていて、該当する区分の計算式に年間平均完成工事高(千円単位)を当てはめて計算します。
たとえば、年間平均完成工事高が2億6,000万円(260,000千円)の場合、以下の区分に該当しますので
| 2億5,000万円以上 | 3億円未満 | 24 ×(年間平均完成工事高)÷50,000+698 |
X1=24×260,000÷50,000+698=822(小数点以下切り捨て)
となります。
X1評点の最大の注意点=伸び率の鈍化
X1評点の算出の仕組みを理解するうえで、もっとも重要なのは、業種別の年間平均完成工事高が上がれば上がるほど、X1評点の伸び率は鈍化していくという点です。
たとえば、1億円の年間平均完成工事高が1億1000万円になった場合、X1評点は711点から720点と9点アップします。しかし、5億円の年間平均完成工事高が5億1000万円になった場合、X1評点は918点から920点の2点しかアップしません。さらに、10億円の年間平均完成工事高が10億1000万円になった場合、X1評点は1006点から1007点の1点しかアップしません。
| 年間平均完成工事高 | X1評点 | アップした点数 |
|---|---|---|
| 1億円→1億1000万円 | 711点→720点 | 9点 |
| 5億円→5億1000万円 | 918点→920点 | 2点 |
| 10億円→10億1000万円 | 1006点→1007点 | 1点 |
同じ1000万円の増加額なのに対して、9点アップする場合もあれば、1点しかアップしない場合もあります。このように、完成工事高が大きくなるにつれて、X1評点の点数の伸び率は鈍化していく仕組みになっています。
■専門家の視点■
上記で説明したように、完成工事高が大きくなるにつれてX1評点の伸び率は鈍化していきます。冒頭に説明したようにX1評点は、P点の算出の大きなウエイト(0.25)を占める審査項目でした。そのため、P点アップの対策を「完成工事高(売上)」だけに絞って行うのは、非常に危険であるということができます。
なぜなら、完成工事高が大きくなればなるほど(=対策を行えば行うほど)、X1評点は伸び悩み、P点に対する影響力が小さくなっていくからです。このような事実を知らない人は、「経営事項審査の点数を上げるには売上高を上げるしかない」という考えに行きがちですが、これは間違いです。
X1評点(=業種別の完成工事高)の対策は、ほどほどにして、WやYといった別の評点の対策を行った方が、より効率のよい経審対策を行うことができる場合があることを、頭に入れておいてください。
【3】2年平均・3年平均は、どちらを選ぶべきか?
建設会社の社長と話していると、いままで説明してきた「業種別の完成工事高(X1)」が、2年平均もしくは3年平均のどちらか一方を選択して評価の対象になっていることを知らない人がほとんどです。
実は、「業種別完成工事高」は、単年度の数字が審査の対象になるのではなく、「2年平均」または「3年平均」のどちらかを審査の対象にしなければならないのです。なお、この「2年平均」もしくは「3年平均」は、どちらか一方を自社の都合の良い方に選択することができます。
| 状況 | 有利な選択 |
|---|---|
| 直近の完成工事高が過去より大きく伸びている | 2年平均(直近の実績を反映しやすい) |
| 前期がたまたま落ち込んだが3年前は好調だった | 3年平均(一時的な落ち込みを平準化できる) |
決算のたびに固定するものではなく、毎年どちらが有利かをシミュレーションしたうえで選択することが可能です。
例えば、以下のような売上の推移をたどっている会社があったとします。
| 年度 | 売上高 |
|---|---|
| 前々期 | 1億3000万円 |
| 前期 | 8000万円 |
| 今期 | 9000万円 |
この場合、今期の数字(9000万円)だけを使って、経審を申請することはできません。必ず、2年平均か3年平均を選択することになります。
もし仮に、2年平均を選択した場合、売上高は8500万円となります。
・(9000+8000)÷2=8500万円
しかし、もし仮に、3年平均を選択した場合、売上高は1億円になります。
・(9000+8000+13000)÷3=10000万円
これをX1評点に換算すると、以下のようになります。
| 2年もしくは3年 | 業種別売上高 | X1評点 |
|---|---|---|
| 2年平均 | 8500万円 | 694点 |
| 3年平均 | 1億円 | 711点 |
2年平均を選択するべきか、3年平均を選択するべきかは、もうお分かりですね。X1評点を算出するための業種ごとの年間平均完成工事高については、2年平均もしくは3年平均の自社に都合の良い数字を使って、申請することができるということを覚えておきましょう。
【4】業種間の完成工事高の振替(積み上げ)
業種間の完成工事高の振替とは、特定の業種の完成工事高を別の業種の完成工事高として、振り替えることができる制度のことを言います。(「積み上げ」や「移行」という言い方をすることもあるようです)。
東京都の手引きには、以下のような完成工事高の業種間の振替に関する記載があります。
(1)専門工事から一式工事への振替
| 振替先の一式工事 | ← | 振替元の専門工事 |
|---|---|---|
| 土木一式工事 | ← | とび、石、タイル、鋼構造物、鉄筋、舗装、しゅんせつ、水道施設 |
| 建築一式工事 | ← | 大工、左官、とび、屋根、タイル、鋼構造物、鉄筋、板金、ガラス、塗装、防水、内装、建具、解体 |
(2)専門工事間の振替
| 専門工事 | ⇔ | 専門工事 |
|---|---|---|
| 電気 | ⇔ | 電気通信 |
| 管 | ⇔ | 熱絶縁 |
| 管 | ⇔ | 水道施設 |
| とび | ⇔ | 石 |
| とび | ⇔ | 造園 |
このように、X1評点を算出するための「業種ごとの完成工事高」は、別の業種に振り替えて申請することができるのです。
例えば、以下のような業種ごとの完成工事高の会社があったとします。
- 建築一式工事→0円
- 内装工事→7000万円
- 塗装工事→5000万円
この「建築一式工事」「内装工事」「塗装工事」で、それぞれ、「業種間の振替」を行わず経審を受審した場合のX1評点は、以下の通りです。
| 業種 | 2年平均完工高 | X1評点 |
|---|---|---|
| 建築一式工事 | 0円 | 397点 |
| 内装工事 | 7000万円 | 675点 |
| 塗装工事 | 5000万円 | 645点 |
これに対して、「業種間の振替」制度を利用して、内装工事と塗装工事の完成工事高を建築一式工事に振り替えた場合、建築一式工事の完成工事高は1億2000万円(7000万円+5000万円)として、経審を受けることができます。その場合のX1評点は以下の通りです。
| 業種 | 2年平均完工高 | X1評点 |
|---|---|---|
| 建築一式工事 | 1億2000万円 | 730点 |
建築一式工事のX1評点が397点から730点にアップしました。
このように、業種間の完成工事高の振替の制度を利用することによって、X1評点(ひいては総合評定値P点)の大幅アップを目指すことができます。
■専門家の視点■
但し、業種間の振替制度には、注意しなければならない点がいくつかあります。まず1つ目は、振替元の業種で、経営事項審査を受けることができなくなります。先ほどの例でいうと、建築一式工事に振り替えた内装工事と塗装工事では経審を受けることができません。2つ目は、売上高の一部を振り替えることはできず、全額の振替が必要になります。例えば、先ほどの例でいうと、内装工事の売上高7000万円のうち、4000万円だけを建築一式工事に振り替えて、3000万円を内装工事に残すということはできません。
最後に、前年度、前々年度の完工高も、基準日の完工高に合わせて振り替える必要があります。たとえば、今期だけ内装工事を建築一式に振り替えて、前年度の内装工事の完工高は内装工事の売上として計上するというようなことはできません。
このように、完成工事高の振替の制度を利用することによって、点数を一気にアップさせることは可能ですが、さまざまな複雑なルールがあるため、手引きをよく読んで、細心の注意を払って、申請することが必要です。
【5】X1評点とZ評点(元請完成工事高)の違い
X1評点と混同されやすいのが、Z評点を構成する「業種別の元請完成工事高」です。
| X1評点 | Z評点 | |
|---|---|---|
| 評価対象 | 元請・下請を問わない完成工事高 | 元請として受注した完工高のみ |
| 意味 | 会社の売上規模 | 元請としてのマネジメント能力 |
Z評点は、元請完成工事高と技術職員の人数を評価の対象とする審査項目です。X1評点が「元請・下請を問わない(業種ごとの)総完成工事高」を審査の対象とするのに対して、Z評点は「元請として受注した完工高のみ」を審査の対象としています。Z評点は、元請として受注した完工高の額や会社に在籍する技術職員数を対象に、その会社の「技術力」を評価するための審査項目であるため、このような違いがあります。
Z評点については、以下のページで詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
【6】X1評点に関するよくある質問
【7】まとめ
X1評点は、完成工事高の額が審査の対象になるため、比較的、わかりやすい審査項目です。しかし、その一方で、
■ 完成工事高が大きくなるほど、伸び率が鈍化する
という特徴があることから、「売上さえ増やせば、自然とP点もアップする」という考えは禁物です。
また、
■ 2年平均か3年平均かの選択
■ 業種間の完成工事高の振替
といった制度もあるため、これらの制度をうまく活用して点数アップを目指していかなければなりません。
売上の増加ばかりを目指していると、資金繰りや人員増加などの項目に影響が出てくるため、X1以外の評価項目を意識しつつ対策をとる必要があります。X1評点だけに偏らず、5つの項目全体でバランスよく対策する優先順位については、「経営事項審査(経審)の点数を上げる方法【優先順位】を専門行政書士が解説」で詳しく解説していますので、こちらのページもぜひご参考ください。
また、経審全体の仕組みを確認したい方は「経営事項審査(経審)とは?制度の仕組み・対象者・流れをわかりやすく解説」もご覧ください。
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