

東京都の経営事項審査の専門家。技術職員70名以上の都知事許可業者や、技術職員89名の大臣許可業者など大規模案件の経審申請実績が多数。クライアントが総合評定値P点を100点以上アップしたり、2億円を超える東京都の公共工事を受注するなど、数多くの建設会社の経審手続きをサポート。「はじめての方のための経営事項審査入門書」を出版。
「経営事項審査とは、いったい何のための制度なのか」「うちの会社は対象になるのか」——公共工事の入札を初めて検討する建設会社の経営者・実務担当者の方から、こうしたご質問をよくいただきます。
経営事項審査(以下「経審」)は、名前は聞いたことがあっても、いざ調べようとすると、インターネット上にさまざまな情報が散乱しており、法律の条文や専門用語も多く、全体像をつかみにくい制度です。
この記事では、経営事項審査の専門家である行政書士法人スマートサイドが、「経営事項審査とは何か」という制度の基本を、初めての方にもわかりやすく解説します。点数の上げ方や行政書士への依頼を検討する一歩手前の、「そもそも経審とはどんな制度なのか」を知りたい方向けの内容です。
この記事の要点(まとめ)
- 経営事項審査(経審)とは、公共工事を直接請け負う建設業者が必ず受けなければならない、会社の経営状況・技術力などの審査(建設業法第27条の23)
- 経審を受けると「総合評定値P点」が算出され、これが入札参加資格の等級(ランク)の基礎になる
- 対象になるのは「公共工事を発注者から直接(元請として)請け負いたい建設業許可業者」のみ。下請専業の会社は対象外
- 経審は一度受ければ終わりではなく、有効期間(1年7か月)があるため、毎年の受審が必要
- 手続きは「決算変更届→経営状況分析→経営事項審査→入札参加資格申請」という4つのステップで構成される
経審を受けている建設業者は全体の3割程度
国土交通省の発表によると、全国の建設業許可業者数は令和7年度末時点で、483,823業者にのぼります(出典:国土交通省報道発表資料)。一方で、実際に経審を受審しているのは全国で132,455業者、割合にして全体の約3割にとどまるとされています(出典:一般財団法人日本建設業連合会「建設デジタルハンドブック」)。
つまり、建設業許可を取得している会社の中でも、公共工事の入札に必要な経審まで受審しているのは一部にすぎず、経審は「元請として公共工事を狙う」意思のある会社が選択的かつ戦略的に取り組む手続きであるということができます。
目次
- 1.経営事項審査(経審)とは|制度の目的と法的根拠
- 2.経審の対象になるのはどんな会社か
- 3.経審と建設業許可の違い・関係
- 4.経審からP点取得・入札参加資格取得までの流れ
- 5.総合評定値P点とは|審査項目の全体像
- 6.経審の有効期間|なぜ毎年受ける必要があるのか
- 7.経審にかかる費用と期間の目安
- 8.初めて経審を受ける会社が実務でつまずきやすいポイント
- 9.まとめ|経営事項審査でお困りなら
1.経営事項審査(経審)とは|制度の目的と法的根拠
経営事項審査とは、国や地方自治体が発注する公共工事を直接請け負おうとする建設業者について、経営状況や技術力、社会性などを数値化して評価する審査制度です。建設業法第27条の23に基づく法定の審査で、「公共工事を発注する側(国・都道府県・市区町村など)が、発注先として信頼できる建設会社かどうかを判断するための客観的なものさし」と考えるとイメージしやすいでしょう。
制度の運用については、国土交通省の公式ページでも公表されています。
経審を受けると、次の5つの項目から会社の状況が数値化され、最終的に「総合評定値P点」という1つの点数にまとめられます。
| 記号 | 審査される内容 | 大まかなイメージ |
|---|---|---|
| X1 | 業種別の年間平均完成工事高 | 売上の実績 |
| X2 | 自己資本額・2年平均利益額 | 会社の潰れにくさ |
| Y | 経営状況分析(8つの財務指標) | 経営の健全性 |
| Z | 技術職員数・業種別元請完成工事高 | 技術力 |
| W | 社会性(労働環境整備・法令遵守など) | 会社としての信頼性 |
それぞれの評点をどう伸ばすか、P点の具体的な計算方法については、専門的な内容になるため、別記事「経営事項審査(経審)の点数を上げる方法【優先順位】を専門行政書士が解説」で詳しく解説しています。まずは本記事で、経審全体の仕組みを押さえておきましょう。
2.経審の対象になるのはどんな会社か
経審が必要になるのは、次の条件をすべて満たす建設業者です。
- 建設業許可を取得している
- 国・都道府県・市区町村などが発注する公共工事を、元請(発注者から直接)として請け負いたい
逆にいうと、以下のような会社は経審の対象外です。
| ケース | 経審の要否 |
|---|---|
| 民間工事のみを請け負っている | 不要 |
| 公共工事を下請としてのみ請け負う(元請にならない) | 不要 |
| 建設業許可を取得していない(軽微な工事のみ) | 不要(許可取得が前提) |
| 公共工事を発注者から直接請け負いたい | 必要 |
「将来的に公共工事の入札に参加したい」と考えている段階であれば、まずは建設業許可の取得状況を確認し、経審に向けた準備を進めることになります。
(経審の専門家としての視点)
まれにですが、民間工事の発注者が、経審の結果通知書である「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」の提示をもとめてくることもあります。
これは、大規模工事を発注する際に、取引相手となる会社の「財務状況」「技術者の数」「過去の実績」などを確認し、工事を発注するにふさわしい会社であるか否かを見定めるためです。このように、経審の結果は、公共工事を受注するためだけでなく、「会社の成績表・通信簿」という制度的な側面があることも、覚えておくとよいでしょう。
3.経審と建設業許可の違い・関係
経審と混同されやすいのが「建設業許可」です。両者は別の制度ですが、密接に関係しています。
| 建設業許可 | 経営事項審査(経審) | |
|---|---|---|
| 目的 | 500万円以上の工事を請け負うための「営業の許可」 | 公共工事の入札に参加するための「会社の評価」 |
| 必要な人 | 500万円以上の工事を請け負うすべての建設業者 | 公共工事を元請として請け負いたい建設業者のみ |
| 結果 | 許可・不許可 | 総合評定値P点(数値評価) |
| 証明 | 建設業許可通知書 | 経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書 |
つまり、建設業許可は経審を受けるための「前提条件」であり、建設業許可を持っていなければ、経審を受けることはできません。また、経審は建設業許可を持つ会社の中で、「公共工事を受注するにふさわしい会社か?」を評価する制度、という関係になります。
(経審の専門家としての視点)
建設業許可取得後、すぐに経営事項審査を受けることは可能です。
しかし、『許可を取得してからの営業年数が短いこと』や『未許可期間中は500万円以上の工事を受注できないこと』『他の業者と比べて完成工事高が低くなりがちであるということ』から、経審の結果は、相対的に低くなりがちです。このような影響を考慮し、許可取得後すぐに経審を受けるのか?それとも、2~3年待って経審を受けるのか?判断が必要になるケースも少なくありません。
4.経審からP点取得・入札参加資格取得までの流れ
公共工事の入札に参加できるようになるまでには、次の4つのステップを踏む必要があります。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①決算変更届の提出 | 毎事業年度終了後4か月以内に、許可行政庁(都道府県など)へ決算内容を届け出る(建設業法第11条第2項) |
| ②経営状況分析 | 登録分析機関に財務諸表を提出し、Y評点(経営状況の点数)の算出を受ける |
| ③経営事項審査 | 許可行政庁に経審を申請し、審査を受ける |
| ④結果通知書の受領 | 「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」を受領し、P点を確認する |
| ⑤入札参加資格申請 | 参加したい省庁・都道府県・市区町村ごとに、入札参加資格の申請を行う |
| ⑥等級(ランク)の付与 | P点をもとにA・B・Cなどの等級が付与され、対応する規模の公共工事に入札できるようになる |
ポイントは、①の決算変更届が、経審に進むための大前提になっているという点です。この届出を毎年提出していない会社は、経審そのものを受けることができません。「単なる決算報告」と軽視されがちですが、経審制度全体の出発点にあたる重要な手続きです。
(経審の専門家としての視点)
決算変更届の提出漏れは、大問題。
建設会社の社長の中には、決算変更届の提出を怠っている人も散見されます。しかし、これから公共工事を受注しようとしている会社にとって、決算変更届の提出漏れは大問題です。上記の流れで示したように決算変更届が経審に進むための大前提となるばかりでなく、決算変更届の際に記載した「財務の数字や金額」が経営事項審査の審査の対象になるからです。
「前年度分を提出し忘れていた」というのはもちろんのこと、「期限後に慌てて提出する」ということがないように、決算変更届の提出を怠ることがないようにしましょう。
5.総合評定値P点とは|審査項目の全体像
経審の結果として通知される「総合評定値P点」は、1章で紹介したX1・X2・Y・Z・Wの5つの評点を、それぞれの係数(重み)で計算した合計点です。
このP点が高いほど、入札参加資格のランクが上がり、より規模の大きい公共工事に入札できるようになります。逆に、P点が低いと、参加できる公共工事の規模が制限されます。
「売上さえ上げれば点数が上がる」と誤解されがちですが、実際にはX1(売上)が占める割合は全体の一部にすぎず、財務内容・技術職員数・社会性など、5つの要素をバランスよく評価される仕組みになっています。
それぞれの評点をどのように伸ばせば効率よくP点がアップするのか、具体的な計算例や優先順位については「経営事項審査(経審)の点数を上げる方法【優先順位】を専門行政書士が解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
6.経審の有効期間|なぜ毎年受ける必要があるのか
経審の結果である総合評定値P点には有効期間があり、審査基準日(決算日)から起算して1年7か月です。「経営事項審査を受けてから1年7か月」でもなければ「結果通知書を受領してから1年7か月」でもありません。有効期間が切れると入札に参加できなくなるため、公共工事を継続的に受注したい会社は、毎年経審を受け続ける必要があります。
- 今年の3月末決算 → 審査基準日
- P点の有効期間 → 翌年10月まで(1年7か月)
- 翌年10月までに、次の決算(翌年3月末)の経審を受け、結果通知書を受領している必要がある
このように、経審は「一度受ければ終わり」の制度ではなく、決算のたびに繰り返す継続的な手続きであるという点を押さえておく必要があります。
(経審の専門家としての視点)
「経審の有効期間」と「入札参加資格の有効期間」は別物です。
経審の先に待っているものは、公共工事の入札です。経審を受けただけでは、公共工事の入札に参加することはできず、省庁や自治体へ入札参加資格を申請しなければなりません。経審の有効期間は、前述の通り、審査基準日から1年7か月ですが、省庁や自治体の入札参加資格は、省庁や自治体ごとに設けられています。
東京都や埼玉県や神奈川県は、2年度ごとに入札参加資格の更新が必要です。一方で、都内の区市町村は、決算月の翌月から起算して1年8か月ごとに継続申請が必要です(経審の有効期間である1年7か月と1か月しか違わない、よく似た周期です)。
このように、「経審の有効期間」と「入札参加資格の有効期間」は、連動していませんので、公共工事の入札に参加する人は、「経審」「入札資格」のどちらの有効期間も切らさないようにスケジュール管理する必要があります。
7.経審にかかる費用と期間の目安
経審そのものにかかる公的な費用(手数料)は、次のとおりです。
| 区分 | 費用の目安 |
|---|---|
| 経営状況分析(分析機関への手数料) | 13,600円程度(分析機関により異なる) |
| 経営事項審査(行政庁への手数料) | 1業種あたり11,000円、追加1業種ごとに+2,500円 |
打ち合わせ・書類収集から結果通知書の受領までは、書類の準備状況にもよりますが、1〜2か月程度を見込んでおくとよいでしょう。
なお、書類作成や申請手続きを行政書士に依頼する場合は、上記の手数料に加えて行政書士報酬が発生します。費用相場や依頼するメリットについては、次章および「経営事項審査は行政書士に依頼すべき?費用・選び方を解説」で詳しく解説しています。
8.初めて経審を受ける会社が実務でつまずきやすいポイント
経審は、制度の流れさえ分かれば簡単そうに見えますが、実際の書類作成では細かい注意点でつまずくケースが少なくありません。ここでは、初めて受ける会社が特に見落としやすいポイントを3つ紹介します。
①決算変更届・経審申請の書類はすべて税抜で作成
経審を受ける場合、決算変更届や経審申請書類に記載する完成工事高・財務諸表は、すべて消費税抜き(税抜)で作成する必要があります。税理士が作成した通常の決算報告書は税込表記になっていることもあるため、そのまま流用すると数値がずれてしまい、審査の段階で訂正を求められることがあります。決算変更届を提出する前に、税抜への変換が正しく行われているかを必ず確認しましょう。
②経審用の工事経歴書作成の独特のルール
経審を受ける際には、工事経歴書の記載方法に独特のルールがあります。それは、元請工事の金額の大きい方から、元請工事全体の7割に達するまで記載し、その後、元請・下請関係なく、金額の大きい方から完成工事高の7割に至るまで記載するというルールです。
経審を受けない事業者は、元請・下請関係なく、金額の大きい方から10件程度記載すれば足りますが、経審を受ける事業者の場合、上記のルールに沿って、経審用の工事経歴書を作成する必要があります。
はじめて経審を受ける人が、とても混乱するルールですので、手引きを十分に確認のうえ、作成することをおすすめいたします。
③工事の実績を証明するために「工事請負契約書など」が必要
経審を受ける際には、金額の大きい工事について「工事請負契約書」「注文書・請書」「請求書・入金記録」などで、工事の実績を証明する必要があります。これは、経営事項審査の客観性・入札の公平性を保つという観点から、本当に工事の実績があることの裏付けをとるためです。
架空の実績や存在しない工事を記載することはできないのはもちろんのこと、工事請負契約書などの記載から本当に申請する業種に該当する工事なのかが判別できなければなりません。
はじめて経審を受ける人にとって、このあたりの資料の収集が最も苦労する点であると思います。
(経審の専門家としての視点)
「実務担当者」や「過去の経験者」がいないと厳しい理由。
経審は、制度上は自社で申請することも可能です。しかし、上記のような①②③のつまづきやすいポイントがあるばかりでなく、決算変更届・経営状況分析・経審申請という3つの手続きを正しい順序で進める必要があります。
また、提出書類の種類も多く、「必ず必要な書類」「必ずしも必要でない書類」の区別が難しいため、初めて受ける会社や専属の実務担当者を置けない会社にとっては、負担の大きい手続きです。
「自分で申請すべきか、専門家である行政書士に依頼すべきか」の判断基準や、行政書士に依頼する場合のメリット・費用相場・失敗しない選び方については、「経営事項審査は行政書士に依頼すべき?費用・選び方を解説」で詳しく整理していますので、あわせてご参照ください。
9.まとめ|経営事項審査でお困りなら
ここまで、経営事項審査(経審)とは何か、その目的・対象者・建設業許可との違い・全体の流れ・費用について解説しました。要点を振り返ると、次のとおりです。
- 経審とは、公共工事を元請として請け負う建設業者が必ず受けなければならない法定の審査
- 結果として算出される総合評定値P点が、入札参加資格のランクの基礎になる
- 建設業許可を前提として、決算変更届→経営状況分析→経審申請→入札参加資格申請という流れで進む
- P点には有効期間(1年7か月)があり、毎年の受審が必要
制度の全体像をつかんだうえで、「具体的にどうすればP点が上がるのか」を知りたい方は「経営事項審査(経審)の点数を上げる方法【優先順位】を専門行政書士が解説」を、「自社で申請すべきか、行政書士に依頼すべきか」を判断したい方は「経営事項審査は行政書士に依頼すべき?費用・選び方を解説」を、それぞれご覧ください。
行政書士法人スマートサイドは、東京都の経営事項審査・入札参加資格取得を専門に、数多くの建設会社様をサポートしてまいりました。経審の制度についてご不明な点がございましたら、事前予約制の有料相談にて、お気軽にご相談ください。
経営事項審査に関する関連記事
経営事項審査の手続きでお困りの際は、東京都の経審専門・行政書士法人スマートサイドの事前予約制の有料相談をご利用ください。
(事前予約制の有料相談をご希望の方へ)
行政書士法人スマートサイドは、「相談者1人1人への適切な対応」「質の高い面談時間の確保」という見地から1時間11,000円の事前予約制の有料相談を実施しています。事前予約制の有料相談をご希望の方は、こちらのページにある問い合わせフォームからご連絡ください。


