

東京都の経営事項審査の専門家。経審の手続きはもちろんのこと、制度や仕組みだけでなく東京都の独特のルールにも精通。クライアントが、総合評定値P点を100点以上アップしたり、2億円を超える東京都の公共工事を受注するなど、行政書士としての評価が高い。「はじめての方のための経営事項審査入門書」を出版。
公共工事の入札に参加するためには、経営事項審査(以下「経審」)を受け、総合評定値P点を取得しなければなりません。このP点が高いほど、より規模の大きい公共工事の入札に参加できるチャンスが広がります。
しかし、「P点を上げるには売上高を増やすしかない」と考えている建設会社の経営者は少なくありません。これは大きな誤解です。売上高(完成工事高)はP点を構成する一部の要素にすぎず、しかも売上が増えるほどP点の伸び率は鈍化していきます。むしろ、費用対効果の高い対策を正しい優先順位で実施することが、効率的にP点を引き上げる近道です。
本記事では、建設会社の経営者向けに開催したセミナー「経営事項審査でP点を上げる実践セミナー~総合評定値の計算方法と優先すべき経審対策~」の内容をもとに、P点の計算方法、P点を算出する仕組み、優先して取り組むべき経審対策を、行政書士法人スマートサイドの代表行政書士・横内賢郎が解説します。
なお、経審の制度そのもの(対象者・全体の流れなど)を先に押さえたい方は、「経営事項審査(経審)とは?制度の仕組み・対象者・流れをわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。
この記事の要点(まとめ)
- 総合評定値P点の計算式は P=X1×0.25+X2×0.15+Y×0.20+Z×0.25+W×0.15。
- 売上拡大だけに頼る対策は非効率。完成工事高(X1)を1億円から2億円に倍増させてもP点は約20点しか上がりません。
- 最も費用対効果が高いのはW評点の3制度=建退共・退職一時金(企業年金)制度・法定外労災。3つ導入でP点が合計59点アップし、これは完成工事高を2億円から11億円に増やすのと同等です。
- Y評点(経営状況分析)は寄与度の高い2指標(純支払利息比率29.9%/総資本売上総利益率21.4%)を最優先で対策します。
- 過度な節税は逆効果。X2評点・Y評点・特定建設業許可の財産要件(純資産4,000万円以上)のすべてに悪影響します。
- W評点・技術職員の対策は「決算日(審査基準日)前」に。決算日を過ぎた加入・採用はその期の経審に反映されません。
1.総合評定値P点の計算方法と結果通知書の見方
(1)総合評定値P点は5つの審査項目から算出される
総合評定値P点は、いわば会社の「健康診断の結果」にあたります。次の5つの審査項目(評点)を、それぞれの係数で計算して算出します。
P=X1×0.25+X2×0.15+Y×0.20+Z×0.25+W×0.15
| 記号 | 係数 | 審査項目 |
|---|---|---|
| X1 | 0.25 | 業種別の年間平均完成工事高 |
| X2 | 0.15 | 自己資本額・2年平均利益額 |
| Y | 0.20 | 経営状況分析(8つの財務指標) |
| Z | 0.25 | 技術力(技術職員数・業種別の年間平均元請完成工事高) |
| W | 0.15 | 社会性(建退共・退職金制度・法定外労災・自主宣言・防災協定など) |
ここで重要なのは、この計算式を暗記することではなく、「何が審査の対象になっているのか」を理解することです。経営事項審査を初めて受ける方や公共工事の入札に初めてチャレンジする方は、経営事項審査において、何が評価の対象になっているのかを理解しておくことが重要であると考えます。
(2) 結果通知書の見方|実際にP点を計算してみる
すでに経審を受けている会社であれば、「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」が手元にあるはずです。各評点を計算式に当てはめると、P点がどのように算出されているかを確認できます。次は、ある会社の評点を例にとった計算です。
| 記号 | 点数 | 計算式 | P点換算した点数 |
|---|---|---|---|
| X1 | 0.25 | 790×0.25 | 197.5 |
| X2 | 0.15 | 697×0.15 | 104.55 |
| Y | 0.20 | 730×0.20 | 146 |
| Z | 0.25 | 595×0.25 | 148.75 |
| W | 0.15 | 420×0.15 | 63 |
| 合計 | 659.8 → 四捨五入で660点 | ||
この会社の総合評定値P点は660点(659.8点の小数点以下第1位を四捨五入)です。経審の仕組みを理解していない経営者ほど、X1評点(この例では790点)やW評点(この例では420点)といった個別の評点だけを見て一喜一憂しがちですが、大事なのはP点(赤枠で囲った部分)と、各評点がどう合算されてP点になっているかという全体像です。
自社の結果通知書で同じ計算を再現してみることをおすすめします。以下では、具体的に各審査項目の中身について、見ていきたいと思います。
2.X1評点(完成工事高)|売上を増やしてもP点は伸びにくい
X1評点は、業種ごとの完成工事高を評価する項目です。評価にあたっては、次の2つのポイントを押さえておく必要があります。
ポイント①|2年平均または3年平均で評価される
X1は直近1期の数字だけで、評価されるわけではありません。2年平均または3年平均で計算され、自社にとって有利な方を選択できます。たとえば前期が3億円、今期が2億円であれば、2年平均の2.5億円が評価対象になります。逆に、今期だけ売上が伸びても、平均値が大きく動かなければP点はそれほど上がりません。
ポイント②|業種間の振替が可能
X1評点のポイントの2番目としてあげられるのが、売上高の振替(積み上げ・移行)ができるという点です。例えば、一式工事の許可を持っている場合、専門工事の完成工事高を一式工事に振り替えて申請することができます。
| 振替先の 一式工事 |
← | 振替元の専門工事 |
|---|---|---|
| 土木一式 | ← | とび、石、タイル、鋼構造物、鉄筋、舗装、しゅんせつ、水道施設 |
| 建築一式 | ← | 大工、左官、とび、屋根、タイル、鋼構造物、鉄筋、板金、ガラス、塗装、防水、内装、建具、解体 |
たとえば、内装100万円・建具70万円の実績がある場合。
内装単独(100万円)・建具単独(70万円)で受審することも、両者を合算して建築一式170万円として受審することもできます。ただし、振替ができるのは建築一式(または土木一式)工事の許可を保有している場合のみである点に注意してください。振替先の工事および振替元の工事の両方の建設業許可を持っていないと、「業種別完成工事高の振替制度」を利用することができません。
なお完成工事高は決算変更届の記載内容が基準となり、金額の大きい工事については契約書・注文書+請書・請求書+入金記録などの実績証明が必要です。
売上を増やしてもP点は比例して伸びない?
ここで、注意していただきたいのは「経審の点数を上げるには売上高を上げるしかない」という考えです。この考えが「100%誤りである」とまでは言いませんが、その真偽については、きちんと精査していく必要がありそうです。X1評点をP点に換算してみると、その理由がはっきりわかります。
下記の表をご覧ください。
| 2年平均完成工事高 | X1評点 | X1評点をP点換算(×0.25) |
|---|---|---|
| 1億円 | 711点 | 711×0.25=178点 |
| 2億円 | 790点 | 790×0.25=198点 |
業種別の2年平均完成工事高が「1億円だった場合」と「2億円だった場合」のX1評点とP点を表した表です。2年平均完成工事高が「1億円から2億円に倍増」しても、P点換算ではわずか20点の増加にとどまります。
さらに完成工事高が大きくなるほど、X1評点の伸び率は鈍化します。下のグラフは、横軸が業種別完成工事高(百万円単位)で縦軸がX1評点です。業種別完成工事高が2億円から4億円に倍増してもX1は94点しか伸びず、P点換算すると24点にしかなりません。このグラフを見て頂くと、業種別完成工事高が大きくなればなるほど、X1評点の伸び率が、鈍化していくことが、お分かりいただけると思います。
売上はP点の一部にすぎないため、経審対策を売上拡大だけに頼るのは、とても非効率であるというのが、経審の専門家としての私の考えです。

X1評点でよくある質問:完成工事高がいくらになればAランクに上がれますか?
ランクの基準は自治体ごとに異なります。東京都の場合、建築一式・道路舗装工事はA~Eの5段階、電気工事・設備工事はA~Dの4段階です。AランクにはP点900点以上が必要とされますが、完成工事高だけを基準にAランクへの必要額を算出することはできません。
完成工事高(X1)に限らず、全体の評価項目をシミュレーションすることが不可欠です。
3.X2評点(自己資本額・利益額)|過度な節税はP点を下げる
X2評点は、会社の財務基盤と収益性(=つぶれにくさ)を表す指標です。次の2つで評価されます。
| 評価要素 | 内容 |
|---|---|
| 自己資本額(基準決算か2期平均) | 貸借対照表の純資産合計の額。自己資本が大きいほど評点が上がり、内部留保の蓄積が有効です。 |
| 平均利益額(2年平均) | 営業利益+減価償却費の2年平均。黒字経営が評点に直結します。 |
X2評点で注意が必要なのは「過度な節税はP点を下げる原因になりかねない」ということです。自己資本額(純資産合計)は、その大部分を「資本金と繰越利益剰余金」が占めます。節税対策と称して無駄遣いをしてしまうと、本来「繰越利益剰余金」に計上できるはずだった利益が目減りしてしまうことになります。また、「平均利益額」の要素である「営業利益」も少なくなってしまいかねません。
つまり、利益を圧縮する過度な節税は、X2評点を直接的に低下させます。
- 交際費などを増やして営業利益が減ると、X2の「平均利益額」が悪化します。
- 当期純利益が減ると繰越利益剰余金に計上できる額が減り、純資産(自己資本額)が目減りします。
その結果、X2評点だけでなく、後述するY評点(自己資本比率など)にも悪影響が及び、P点全体が下がります。公共工事の受注を重視するなら、適正な利益計上が重要です。
行政書士法人スマートサイドの考え:経審で評価が高い財務諸表とは?
経審で評価される財務諸表とは、突き詰めれば「税金をたくさん納めている財務諸表」だというのが私見です。公共工事はそもそも税金で賄われています。発注側(国・都・区市町村)の立場で考えれば、利益を圧縮して納税を避けている会社よりも、適正に納税し、社会保険に加入し、技術者・技能者の労働環境を大切にしている会社が高く評価されるよう、制度が設計されているはずです。
経営者であれば「税金をたくさん支払う」ということに抵抗がある人が多いかとお思いますが、今一度、「公共工事とは何なのか?」という根本に立ち返って、その対策を検討してみるきっかけにしていただければと思います。
4.Y評点(経営状況分析)|優先すべきは2つの指標
Y評点は、登録分析機関が8つの財務指標で会社の経営状況を評価する項目です。
経営状況分析のY点や経営事項審査のP点について、よくあるお困りごととして挙げられるのが、税理士に聞いても、行政書士に聞いても、具体的な対策が見えてこないという点があると思いまうす。「税理士に聞くと経審は分からないと言われ、行政書士に聞くと財務は分からないと言われる」という、対策の狭間に落ちやすい項目でもあります。

行政書士法人スマートサイドの考え:8つの指標には無視してよいものがある?
経営状況分析の8つの指標は、以下の表の通りですが、この8つの指標には、「無視してよいものが2つ」「優先順位が低いものが2つ」あります。そのため、「必ずチェックしておきたい優先順位の高いもの2つ」と「余裕があれば見ておくもの2つ」に絞って、数字を把握しておけばよいというのが私の考えです。
8つの指標は「平等・均等」ではなく、比重が異なることを頭の中に入れておくと、より対策がしやすくなると思います。
経営状況分析における8つの指標と寄与度
| 指標(寄与度) | 算出式 | 全国平均 | |
|---|---|---|---|
| ① | 純支払利息比率 (29.9%) |
(支払利息-受取利息配当金)/売上高×100 | 0.21% |
| ② | 負債回転期間 (11.4%) |
(流動負債+固定負債)/(売上高÷12) | 6.04か月 |
| ③ | 総資本売上総利益率 (21.4%) |
売上総利益/総資本(2期平均)×100 | 35.18% |
| ④ | 売上高経常利益率 (5.7%) |
経常利益/売上高×100 | 2.91% |
| ⑤ | 自己資本対固定資産比率 (6.8%) |
自己資本/固定資産×100 | 308.70% |
| ⑥ | 自己資本比率 (14.6%) |
自己資本/総資本×100 | 41.67% |
| ⑦ | 営業キャッシュ・フロー (5.7%) |
営業キャッシュ・フロー/1億(2年平均) | 2,060万円 |
| ⑧ | 利益剰余金 (4.4%) |
利益剰余金/1億 | 2億1千万円 |
※総資本(2期平均)が3,000万円未満の場合は3,000万円として計算。全国平均は一般財団法人建設業情報管理センター(CIIC)の公表資料を参照。
経営状況分析における8つの指標の対策の優先順位
| 優先度 | 指標 | 理由 |
|---|---|---|
| 高い | ①純支払利息比率/③総資本売上総利益率 | 寄与度が29.9%・21.4%と突出して高い |
| 普通 | ⑥自己資本比率/②負債回転期間 | 寄与度14.6%・11.4% |
| 低い | ④売上高経常利益率/⑤自己資本対固定資産比率 | 寄与度が5.7%・6.8%と低い |
| 無視 | ⑦営業キャッシュ・フロー/⑧利益剰余金 | 絶対額で評価され大企業に有利。中小企業は対策効果が薄い |
(8つのうち無視してよいもの)
まず、「⑦営業キャッシュ・フロー」「⑧利益剰余金」については、無視して構いません。なぜなら、金額そのものが評価の対象となる絶対評価であり、かつ、寄与度が小さいからです。「寄与度」とは、その指標がY評点にどれだけ影響するかを示す割合で、寄与度を見れば、どこから対策すべきかが見えてきます。「⑦営業キャッシュ・フロー」「⑧利益剰余金」は、金額そのものが評価の対象となるため、大企業に有利な指標と言われています。
そのため、中小企業である皆さんの会社にとっては、無視して構わまないということが言えます。
(優先順位が低いもの)
続いて、「④売上高経常利益率」「⑤自己資本対固定資産比率」は、対策の順位としては、後回しで構いません。なぜなら、寄与度が、それぞれ5.7%、6.8%と低く、労力と使って対策したとしても、それほど、効果が得られないからです。
(優先順位が高いもの)
このように見ていくと、必ずチェックした方が良いのは「①純支払利息比率」と「③総資本売上総利益率」です。それぞれ寄与度が、29.9%、21.4%と高い割合を示しています。さらに、余裕がある場合には、「⑥自己資本比率」と「②負債回転期間」を抑えておくとよいでしょう。つまり、「大事なのは2つ、余裕があればもう2つ」。8指標すべてに労力を分散させるのではなく、寄与度の高い項目に集中することが効率的です。
①純支払利息比率について
純支払利息比率は、企業の借入金への依存度を示す指標ですので、借入金が少ない(=銀行への支払利息が少ない)ほど、評価が高くなります。そのため、
- 遊休資産を売却するなどして、借入額そのもの自体を減らしていく
- 銀行と金利引き下げ交渉を行う、より低利の融資へ借り換える
といった対策をとることが考えられます。
③総資本売上総利益率について

「総資本売上総利益率」については、同じ売上総利益(粗利)100でも、総資本の規模によって評価は変わります。下記の表は、A社とB社の「売上総利益(粗利)」と「総資本」を単純化して比較した表です。
| A社 | B社 | |
|---|---|---|
| 売上総利益 | 100 | 100 |
| 総資本 | 100 | 10 |
A社は総資本100を1回転させて粗利100を生み出しているのに対し、B社は総資本10を10回転させて同じ粗利100を生み出しています。効率よく稼げているのはB社です。売上総利益が同じなら、総資本が小さい会社の方が経審評価で有利になります。
このように、経営状況分析や経営事項審査においては、総資本は小さいほど望ましく、借入を増やすと総資本が膨らんでこの指標が悪化する点に注意が必要です。
⑥自己資本比率について
自己資本比率は「自己資本(純資産合計)÷総資本」で算出します。自己資本は「資本金+繰越利益剰余金」で構成されるため、毎年利益を計上し繰越利益剰余金を積み上げていくことで、着実に高めることができます。
Y評点でよくある質問:銀行からの「借り入れ」は経審の点数に影響しますか?
借入金そのものは直接的な減点対象にはなりません。ただし、支払利息が増えれば①純支払利息比率が、負債が増えれば②負債回転期間が、総資本が増えれば③総資本売上総利益率・⑥自己資本比率が、それぞれ悪化します。
複数の重要指標に波及するため、経審の観点からは銀行との付き合いは「ほどほどに」が望ましいといえます。
5.Z評点(技術力)|技術職員は6か月を超える期間の在籍が必要
Z評点は、係数が0.25ですので、X1と並んで配分が大きい重要な項目です。「技術職員数」と「業種別の年間平均元請完成工事高」の2つの項目で評価されます。
技術職員による評価
常勤技術職員の人数がカウント対象となり、資格区分に応じて加点されます。
| 区分 | 加点 | |
|---|---|---|
| 1級技術者 | 監理技術者資格者証保有かつ監理技術者講習受講 | 6 |
| 上記以外 | 5 | |
| 監理技術者補佐 | 4 | |
| 基幹技能者 | 3 | |
| 2級技術者 | 2 | |
| その他 | 1 | |
技術職員を加点対象にできるのは1人2業種までです。出向職員も加点対象になり、資格がなくても一定期間の実務経験で加点対象になります。
技術職員が評価対象になるには、審査基準日(決算日)から起算して6か月を超える期間、常勤雇用していることが必要です。3月末決算の会社の場合、10月1日採用では「6か月を超える期間、雇用している」という条件に届かず対象外となり、9月30日までに採用しておく必要があります。また、標準報酬決定通知書に記載された報酬額が少ないと、常勤していることの証明ができないため、技術職員名簿に掲載することができません。東京都の場合、月額10万円以上の収入があることが条件の一つとされています。
元請完成工事高による評価
X1が元請・下請を問わない完成工事高であるのに対し、Zで評価されるのは業種別の年間平均「元請」完成工事高です。元請工事を受注する会社の方が技術力が高いとみなされるためです。
行政書士法人スマートサイドの考え:経審対策としての技術職員の採用は、後回しでよい?
「経審の点数を上げるには技術職員を採用しましょう」という対策は正攻法ですが、点数アップだけを目的とした採用は後回しでよいというのが私の考えです。理由は、採用後6か月を超えないと評価対象にならないこと、採用コスト・人件費が無視できないこと、現社員に1級取得を促すのも現実的ではないということです。
会社の規模拡大に伴って資格者を採用し、その結果として点数が上がるのが本来の順序のはずです。点数アップの対策として、資格者を採用するという考えは、あまり効率的な経審対策であるとは言えない気がするのですが、みなさんはどのようにお考えでしょうか?
6.W評点(社会性)|建退共・退職金・法定外労災でP点+59点

W評点は、X1~Zで評価されない労働環境の整備や各種認定などを総合評価する項目です。建退共・退職金制度・法定外労災・公認会計士等の人数・建設機械の保有状況・ISOやエコアクション21・建設技能者を大切にする自主宣言・防災協定の締結・建設業の営業年数など多岐にわたります。
なお、「建設技能者を大切にする自主宣言制度」は、令和8年7月の改正で新設された比較的新しい制度です。このように、W評点の内容は随時見直されています。
また、W評点の審査項目は、全部で17個ありますが、Y評点と同様、これらの重要度は均一ではありません。営業年数や公認会計士の人数、建設機械の保有状況などは自社の努力ですぐに動かしにくい、あるいは業種によって加点機会が限られます。費用対効果が高く、優先して取り組むべきは次の3制度です。
費用対効果が高い3制度|3つ導入でP点が59点アップ
| 制度 | P点への効果 |
| ①建設業退職金共済制度(建退共)への加入 | P点 +19点 |
| ②退職一時金制度または企業年金制度の導入 | P点 +19点 |
| ③法定外労災への加入 | P点 +19点 |
| 3つすべて導入 | P点 +59点(四捨五入の関係) |
もし、みなさんの会社の結果通知書の①~③の3つの制度の加入・導入が3つとも「無」になっている場合、「何も考えずにただ受けているだけ」の状態だといえます。なぜなら、この+59点は、業種別完成工事高(X1)を2億円から11億円に増やすのと同等のインパクトだからです。
以下の表を見てください。これは、業種別平均完成工事高(X1)が2億の場合のP点と、11億円の場合のP点とを比較した表です。
| 2年平均完成工事高 | X1評点 | P点換算 |
|---|---|---|
| 2億円 | 790点 | 198点 |
| 11億円 | 1,025点 | 256点 |
完成工事高を2億円から11億円へ増やすことができた場合、P点の伸びは58点です。一方、3制度の導入ならP点を59点アップさせることができます。どちらがより現実的か?と言えば、明らかに完成工事高を2億円から11億円に増やすより、3つの制度を加入・導入した方が、はるかに現実的であるのではないでしょうか?御社がどちらを優先すべきかは明らかなはずです。
W評点でよくある質問:建退共・退職金制度・法定外労災の対策はいつまでに行えばよい?
W点の基準日は決算日(審査基準日)です。決算日時点で各制度に加入・導入していることが問われます。経審の申請時点で加入していればよいわけではなく、決算日を過ぎてから加入しても、その期の経審には反映されません(次回決算の経審で評価対象になります)。
未加入の制度があるなら、必ず決算日より前に加入・導入してください。
(優先すべき経審対策のまとめ)
本記事の内容を整理すると、優先すべき経審対策は次のとおりです。
- 売上拡大だけに頼らない。完成工事高(X1)はP点の一部にすぎず、伸び率も鈍化する。
- 過度な節税を避け、適正な利益計上で自己資本(X2・Y・特定建設業許可要件)を守る。
- 銀行からの借入は「ほどほどに」。複数のY指標に波及する。
- Y評点は寄与度の高い①純支払利息比率・③総資本売上総利益率を最優先で対策する。
- W評点の建退共・退職金制度・法定外労災が未対策なら、必ず決算日より前に加入・導入する(3つでP点+59点)。
7.経営事項審査でお困りの皆さんへ

最後までお読みいただきありがとうございます。総合評定値P点の算出方法・経審の審査項目・点数アップの方法・優先すべき経審対策は、ご理解いただけましたでしょうか?
これから経審を受ける人も、すでに経審を受けている人も、自社にとって何が重要で、どういったことをすれば、より点数が上がるのか?参考にしていただければ幸いです。
とはいうものの、YouTube動画を視聴したり、インターネットで情報を収集したりしても、実際に申請手続きを行うとなると大きな壁があるかもしれません。経審のP点対策は、各評点の仕組みを理解したうえで、自社の状況に合わせて正しい優先順位で実行することが欠かせません。
P点対策の実行段階まで自社で担うべきか、専門家に任せるべきか迷う場合は、「経営事項審査は行政書士に依頼すべき?費用・選び方を解説」もあわせてご覧ください。
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経審の仕組みを理解し、優先順位の高い対策を着実に実践すれば、公共工事の落札は決して夢ではありません。本記事が、皆様の経審点数アップと公共工事受注の一助となれば幸いです。



