
W評点(その他の審査項目/社会性等)とは、建設会社の担い手の育成・確保、防災への貢献、法令遵守などを評価する経営事項審査の評点です。総合評定値P点の算出では15%の割合を占めます。建退共への加入や防災協定の締結などが加点対象となる一方、法令違反などによる減点もあります。

東京都の経営事項審査の専門家。経審の手続きはもちろんのこと、制度や仕組みだけでなく東京都の独特のルールにも精通。クライアントが、総合評定値P点を100点以上アップしたり、2億円を超える東京都の公共工事を受注するなど、数多くの成功実績を誇り、お客さまからの信頼も厚い。「はじめての方のための経営事項審査入門書」を出版。
W(社会性)の評価項目と点数
経営事項審査の際に、Wで評価の対象となる項目は、以下の8つ(W1~W8)に分類されます。
| Wの評価項目 | 最高/最低 | |
|---|---|---|
| W1:建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況 | ①建退協の加入状況 | 15/0 |
| ②退職一時金もしくは企業年金制度の導入 | 15/0 | |
| ③法定外労災制度の加入状況 | 15/0 | |
| ④若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況 | 2/0 | |
| ⑤知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況 | 10/0 | |
| ⑥ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況 | 5/0 | |
| ⑦建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況 | 10/0 | |
| ⑧「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無 | 5/0 | |
| (W1の合計) | 77/0 | |
| W2:建設業の営業継続の状況 | 建設業の営業年数 | 60 |
| 民事再生法又は会社更生法の適用の有無 | 0/-60 | |
| (W2の合計) | 60/-60 | |
| W3:防災活動への貢献の状況 | 20/0 | |
| W4:法令遵守の状況 | 0/-30 | |
| W5:建設業の経理の状況 | 監査の受審状況 | 20/0 |
| 公認会計士等の数 | 10/0 | |
| (W5の合計) | 30/0 | |
| W6:研究開発の状況 | 25/0 | |
| W7:建設機械の保有状況 | 15/0 | |
| W8:国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況 | 10/0 | |
| W1~8の合計 | 237/-90 | |
W評点の計算方法
Wの評点は、上記のW1~W8の合計点数に「10×175/200」を掛け算して求めます。たとえば
- 建退共の加入あり → +15点
- 退職一時金制度の導入あり → +15点
- 法定外労災制度の加入あり → +15点
- 建設業の営業年数20年 → +30点
- 防災活動への貢献あり → +20点
- 建設機械の保有台数6台 → +10点
の場合、W1~W8の合計点数は105点(15+15+15+30+20+10)になります。この合計点数に「10×175/200」を掛け算すると、W評点は、918点(小数点以下切り捨て)になります。
■専門家の視点■
Wの評価項目は非常に多岐にわたります。大きく分けるとW1~W8の8つですが、細かく分けると全部で17個の項目に分かれます。そのため、「何が重要で、何が重要でないかが、わかりづらい」という特徴があります。
しかし、ここで大事なのは、優先順位をつけて、効率のよい対策を重点的に行うことです。わかりづらいからと言って「やみくもに対策する」のはもちろん、「何も対策をしない」のはもったいないというほかありません。
そこで、このページでは、中小建設会社にとって、即効性があり対策のしやすい審査項目に絞って、記載していきたいと思います。
W1:建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況
「W1:建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組状況」は、①~⑧の8つの評価項目に分かれています。その中でも特に重要で、かつ、即効性のある対策が可能なのは、「①建退協の加入状況」「②退職一時金もしくは企業年金制度の導入」「③法定外労災制度の加入状況」「⑧建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度の宣言の有無」になります。
①建退協の加入状況
建退共とは建設業退職金共済制度の略で、建設業を対象に「中小企業退職金共済法」という法律により、国が作った退職金制度です。事業主の方が、現場で働く労働者の働いた日数に応じて掛け金を充当することで、その労働者が建設業界で働くことをやめたときに建退協から退職金が支払われる仕組みになっています(詳しくは、「建退協のホームページ」をご参考ください)。
経営事項審査のW評点の加点対象となるには、建退共に加入しているだけでなく「建設業退職金共済事業加入・履行証明願」の提出が必要です。
②退職一時金もしくは企業年金制度
退職一時金制度や企業年金制度を導入している場合、経審のWの審査項目で加点事由になります。退職一時金制度には「中小企業退職金共済制度」と「自社退職金制度」があり、企業年金制度には「厚生年金基金制度」「確定拠出金(企業型)」と「確定給付企業年金(基金型・規約型)」があります。
弊所のお客さまのほとんどが、退職一時金制度によって加点対象となっていますので、代表的な確認資料を以下の表にまとめました。
| 退職一時金制度による加点事由 | 必要となる書類 |
|---|---|
| 中小企業退職金共済制度 | 加入証明書 |
| 自社退職金制度 | 労働基準監督署の届出印がある就業規則 |
③法定外労災制度への加入
法定外労災(上乗せ労災)に加入していると、W点の加点事由となります。ただし、法定外労災については、ただ加入しているだけでなく、以下の4つの条件を満たしていなければなりません。
| 経審の加点事由となる法定外労災の条件 | |
|---|---|
| ア | 業務災害と通勤(出勤と退勤両方)災害を担保していること。 |
| イ | 死亡及び労働災害補償保険の傷害等級第1級から第7級までを補償(業務起因性疾病は対象外)していること。 |
| ウ | 直接の使用関係にある下請負人(数次の請負は下請負人全て)の直接使用関係にある職員全てを対象としていること(記名式は認められません。)。 |
| エ | 当該申請者が施工する全工事(共同企業体及び海外工事は除きます。)を補償(工事現場ごとの契約は対象外)していること。 |
⑧建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度
「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」は、
■ ア)労務費確保・賃金支払い等のための取組
■ イ)CCUSの活用
■ ウ)宣言企業との取引優先
を宣言し、実際に取り組みを行うことによって、加点事由になります。
■専門家の視点■
「W1:建設工事の担い手の育成および確保に関する取組の状況」の中で説明した「①建退協の加入状況」「②退職一時金もしくは企業年金制度の導入」「③法定外労災制度の加入状況」「⑧建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」は、比較的、取り組みやすい経審対策であり、実際に弊所のお客さまの中でも、きちんと対策したうえで、経審を受審される会社が多い印象です。
それでは、上記の4つを対策した場合と、対策していない場合とで、P点にどれくらいの開きがあるのでしょうか?「W(社会性)の評価項目と点数」の表で説明している通り、①→+15点、②→+15点、③→+15点、⑧→+5点、合計50点になります。W評点は、この点数に、「10×175/200」を掛け算して算出するため、+437点(小数点以下切り捨て)になります。
P点は、W点に「0.15」を掛け算して算出するため、66点(少数点以下四捨五入)になります。つまり、①、②、③、⑧の対策をしている会社としていない会社とでは、P点に66点もの開きがあるのです。
W2:建設業の営業継続の状況
経営事項審査におけるWの評価項目においては、「建設業の営業年数」も審査の対象になります。この営業年数とは、法人設立後の年数や創業後の年数ではなく、建設業許可を取得してからの年数をいいます。建設業許可を取得してから、年数が経てば経つほど、W評点において、評価が高くなります。
(営業年数の点数)
| 営業年数 | 点数 | 営業年数 | 点数 | 営業年数 | 点数 | 営業年数 | 点数 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 35年以上 | 60 | 34年 | 58 | 33年 | 56 | 32年 | 54 |
| 31年 | 52 | 30年 | 50 | 29年 | 48 | 28年 | 46 |
| 27年 | 44 | 26年 | 42 | 25年 | 40 | 24年 | 38 |
| 23年 | 36 | 22年 | 34 | 21年 | 32 | 20年 | 30 |
| 19年 | 28 | 18年 | 26 | 17年 | 24 | 16年 | 22 |
| 15年 | 20 | 14年 | 18 | 13年 | 16 | 12年 | 14 |
| 11年 | 12 | 10年 | 10 | 9年 | 8 | 8年 | 6 |
| 7年 | 4 | 6年 | 2 | 5年 | 0 | – | |
W3:防災活動への貢献の状況
国または自治体と「災害時における建設業者の防災活動について定めた防災協定」を締結している場合、W評点において、加点対象になります。国または自治体と直接、防災協定を締結している会社もありますが、自社が加入している建設業団体等が、国や自治体との間で防災協定を締結していることをもって、加点事由となる会社の方が多いように見受けられます。
「W3:防災活動への貢献の状況」で加点対象となるために必要な書類は以下の通りです。
| 加点対象となるために必要な書類 |
|---|
| 申請者が国又は地方公共団体と防災協定を締結している場合は、「防災協定書」 |
| 申請者が加入している建設業協会等の団体が、国又は地方公共団体と防災協定を締結している場合は、「当該団体の証明書」および「当該団体が締結している防災協定書」 |
W5:建設業の経理の状況
申請会社に「公認会計士等」や「2級登録経理試験合格者等」がいる場合、W評点の加点事由となります。「公認会計士等」や「2級登録経理士試験合格者等」とは、以下に該当する人のことをいいます。
| (公認会計士等) |
|---|
| 公認会計士であって、公認会計士法第28条の規定による研修を受講した者 |
| 税理士であって、所属税理士会が認定する研修を受講した者 |
| 1級登録経理試験に合格した者のうち、1級登録経理試験に合格した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者 |
| 1級登録経理試験に合格した者のうち、1級登録経理講習を受講した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者 |
| (2級登録経理試験合格者等) |
|---|
| 2級登録経理試験に合格した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者 |
| 2級登録経理講習を受講した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者 |
それでは、社内に「公認会計士等」や「2級登録経理試験合格者等」がいた場合、どのくらいの加点が見込めるのでしょうか?「W5:建設業の経理の状況」の点数は、年間平均完成工事高によって異なりますが、ここでは、シンプルに年間平均完成工事高が1億円未満の場合と10億円以上40億円未満との場合を見ていきましょう。
まず、以下の計算式によって、「公認会計士等の数値」を算出します。
公認会計士等の数×1+2級登録経理試験合格者等の数×0.4
| 年間平均完成工事高 | 公認会計士等の数値 | W5の点数 |
|---|---|---|
| 1億円以上10億円未満 | 1.2以上 | 10点 |
| 0.8以上1.2未満 | 8点 | |
| 0.4以上0.8未満 | 6点 | |
| 1億円未満 | 0.4以上 | 10点 |
非常にわかりづらいので、文章で説明します。御社の年間平均完成工事高が5億円だったとします。
仮に、「2級登録経理試験合格者等」に該当する人が1名在籍していた場合、公認会計士等の数値は「0.4」になるため、W5の点数として6点加点されます。
もし、仮に「公認会計士等」に該当する人が1名、「2級登録経理試験合格者等」に該当する人が2名在籍していた場合、御社の公認会計士等の数値は「1.8」になるため、W5の点数は10点加点されます。
W評点は、W5の点数に「10×175/200」を掛け算して算出するため、
- W5の点数が6点の場合、W評点は52点(小数点以下切り捨て)
- W5の点数が10点の場合、W評点の点数は87点(少数点以下切り捨て)
加算されることになります。
W7:建設機械の保有状況
経営事項審査のWの中には「建設機械の保有状況」という審査項目があり、以下の建設機械を所有またはリースしていると、加点の対象になります。
| 名称 | 詳細 |
|---|---|
| ショベル系掘削機 | ショベル、バックホウなどを有するもの |
| ブルドーザー | 自重が3トン以上のもの |
| トラクターショベル | バケット容量が0.4立方メートル以上のもの |
| モーターグレーダー | 自重が5トン以上のもの |
| ダンプ車 | 自動車車検証に「ダンプ」と記載があるもの |
| アスファルト・フィニッシャ | 自動車車検証に「アスファルト・フィニッシャ」と記載があるもの |
| 移動式クレーン | つり上げ荷重が3トン以上の移動式クレーン |
| 不整地運搬車 | 労働安全衛生法施行令第 13 条第3項第 33 号に掲げる不整地運搬車 |
| 高所作業車 | 作業床の高さが2メートル以上のもの |
| 締固め用機械 | ロードローラー、タイヤローラーなど |
| 解体用機械 | ブレーカ、鉄骨切断機、コンクリート圧砕機など |
台数と加点の数値は、以下の通りになります。
| 台数 | 点数 | 台数 | 点数 |
|---|---|---|---|
| 15台以上 | 15 | 7台 | 11 |
| 14台 | 15 | 6台 | 10 |
| 13台 | 14 | 5台 | 9 |
| 12台 | 14 | 4台 | 8 |
| 11台 | 13 | 3台 | 7 |
| 10台 | 13 | 2台 | 6 |
| 9台 | 12 | 1台 | 5 |
| 8台 | 12 | 0台 | 0 |
たとえば、建設機械を6台所有していた場合の、W評点は、どのようになるでしょうか?
まず、建設機械が6台だとW7の数値が10点になります。W評点はW7の数値に「10×175/200」を掛け算して算出するので、W評点は87点(少数点以下切り捨て)になります。
■専門家の視点■
ここまで、W(社会性/その他の審査項目)の中身について、見てきました。Wは、W1~W8に分かれていて、それぞれの項目で数値を算出し、その数値に「10×175/200」を掛け算すると、W評点が算出されることは、ここまでの説明でお分かりいただけたと思います。
それでは、W1~W8で算出された数値をP点換算するにはどうすればよいでしょうか?経営事項審査の結果である総合評定値P点は、W評点に0.15を掛け算して算出されます(W評点×0.15)。であるならば、W1~8の数値に「10×175/200×0.15」をすると、W1~8の数値から直接P点を算出することができます。
つまり、W1~8の数値に「1.3125」を掛け算した結果が、P点になるのです。
Wの審査項目は、対策の宝庫
Wは、「社会性」とか「その他の審査項目」と呼ばれるように、X1・X2・Y・Zという審査項目に比べて、非常に幅が広く、わかりにくいのが特徴です。
しかし、対策しがいのある審査項目であるということもできます。
たとえば、「退職金制度」や「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」などは、審査基準日(=決算日)に加入・導入していればよいので、すぐに対策をすることができます。しかも、X1(業種別平均完成工事高)やZ(技術力)のように、業種ごとに評価の対象になるのではなく、業種に関係なく申請したすべての業種に加点対象となることも魅力の1つです。
経営事項審査は、だれが申請しても同じ結果になるわけではありません。専門的な知識を豊富な経験がものをいう手続きです。
もし、皆さんの会社が経営事項審査やW評点の対策でお困りなら、行政書士法人スマートサイドの事前予約制の有料相談をお申込みください。




