【監修者】行政書士法人スマートサイド:代表行政書士 横内 賢郎(よこうち けんろう)
東京都の経営事項審査の専門家。W評点は費用対効果の高い対策が多い一方、項目数が多く取りこぼしが起きやすい分野として、多くの建設会社の加点漏れをチェックしてきた。
W評点(その他の審査項目/社会性等)は、総合評定値P点のうち0.15のウエイトを占める評価項目です。X1・X2・Y・Zが工事実績や財務内容といった「事業活動の結果」を評価するのに対し、W評点は退職金制度への加入や防災協定の締結といった「会社としての取り組み」を評価する点が特徴です。令和8年7月1日には制度改正が施行されており、最新の基準を正しく理解しておく必要があります。
この記事の要点(まとめ)
- W評点=(W1+W2+…+W8)×8.75(1,750÷200)で算出。点数幅は-788点(下限)〜2,073点(上限)
- W1〜W8の8項目のうち、W1(担い手の育成・確保)が配点77点と最大
- 令和8年7月1日施行の改正で、社会保険加入に関する3項目(各-40点)が審査対象から削除された
- 同改正で「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言(5点)が新設された
- W評点は5評点の中で唯一マイナスの点数(減点)が発生しうる項目
目次
- W評点とは|「会社としての取り組み」を測る評価項目
- W評点の計算式とW1〜W8の全体像
- 最大の配点を持つW1(担い手の育成・確保)の内訳
- 令和8年7月1日施行の改正で何が変わったか
- 減点項目(W2・W4)に注意が必要な理由
- よくある質問
- まとめ
1. W評点とは|「会社としての取り組み」を測る評価項目
W評点は、工事実績や技術者数の積み上げを待たなくても、制度への加入や証明書の取得によって短期間で動かせる項目が多いのが特徴です。X1〜Zが「実績を積み重ねて評価が上がる」評点であるのに対し、W評点は「決算日までに手続きを済ませれば評価される」評点であり、この違いを理解しておくことが対策の第一歩になります。
2. W評点の計算式とW1〜W8の全体像
W評点は、次の計算式で算出されます。
W=(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8)×10×175/200=(W1〜W8の合計)×8.75(小数点以下四捨五入)
W1〜W8それぞれの評価内容と配点(最高点/最低点)は次のとおりです(令和8年7月1日以降の申請に適用される基準)。
| 項目 | 評価される内容 | 最高点/最低点 |
|---|---|---|
| W1 | 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況 | 77/0 |
| W2 | 建設業の営業継続の状況 | 60/-60 |
| W3 | 防災活動への貢献の状況 | 20/0 |
| W4 | 法令遵守の状況 | 0/-30 |
| W5 | 建設業の経理の状況 | 30/0 |
| W6 | 研究開発の状況 | 25/0 |
| W7 | 建設機械の保有状況 | 15/0 |
| W8 | 国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況 | 10/0 |
| 合計 | ― | 237/-90 |
合計点数の満点237点を8.75倍すると、W評点の最高点2,073点になります。逆に、W4(法令遵守)の減点が最大になった場合などを含めると、W評点の理論上の最低点は-788点です。5評点の中で唯一マイナスの点数を取りうるのがW評点であり、「加点を積み上げる」ことと同じくらい「減点を作らない」ことが重要になります。
3. 最大の配点を持つW1(担い手の育成・確保)の内訳
W1は8つの小項目で構成され、合計77点とW1〜W8の中で最大の配点を持ちます。
| 小項目 | 最高点 |
|---|---|
| 建設業退職金共済制度(建退共)への加入状況 | 15 |
| 退職一時金もしくは企業年金制度の導入 | 15 |
| 法定外労働災害補償制度への加入状況 | 15 |
| 若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況 | 2 |
| 知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況 | 10 |
| ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況 | 5 |
| 建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況 | 10 |
| 建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度の宣言の有無 | 5 |
建退共・退職一時金(企業年金)・法定外労災の3制度は、いずれも15点ずつの配点です。3つすべてを導入すると合計45点の加点になり、W評点換算では45×8.75=394点、P点換算では394×0.15≒59点のアップにつながります。この3制度が費用対効果の高い対策とされる理由と、優先順位の詳しい考え方は「経営事項審査(経審)の点数を上げる方法【優先順位】を専門行政書士が解説」で解説しています。
4. 令和8年7月1日施行の改正で何が変わったか
W評点は令和8年2月6日公布の告示により改正され、同年7月1日以降の審査基準日から新基準が適用されています。主な変更点は次の3つです。
| 変更の種類 | 内容 |
|---|---|
| 削除 | 雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入の有無(各-40点の減点項目)が審査対象から削除 |
| 新設 | 建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度の宣言の有無(5点)が新設 |
| 見直し | 就業履歴蓄積措置の配点を、全建設工事対応15点→10点、全公共工事対応10点→5点に引き下げ |
社会保険関連の項目が削除された背景には、令和2年10月施行の建設業法改正で社会保険加入が建設業許可そのものの要件になったことがあります。許可の更新期間(5年)を踏まえると、令和7年10月以降に許可を保有する会社は社会保険加入済みであることが前提になるため、経審の段階で改めて審査する必要性が薄れた、という整理です。社会保険への加入義務がなくなったわけではない点には注意が必要です。
新設された自主宣言制度は、審査基準日が宣言日以降であり、宣言書・誓約書を提出していることが加点の条件です。決算日を過ぎてから宣言しても、その期の経審には反映されません。
5. 減点項目(W2・W4)に注意が必要な理由
W2(建設業の営業継続の状況)は、営業年数に応じて最大60点が加点される一方、民事再生法・会社更生法の適用を受けた場合は-60点の減点になります。W4(法令遵守の状況)は、建設業法に基づく指示処分や営業停止処分を受けた場合に減点され、最高点は0点(加点は一切ない)という構成です。
W評点は加点項目が目立ちますが、実際には「前期は加点されていた項目が、今期は要件から外れている」という取りこぼしも起きやすい区分です。決算前に、前回の結果通知書と現在の加入・認証状況を突き合わせて確認することをおすすめします。
6. よくある質問
Q. 社会保険に未加入だと、今はW評点に影響しないのですか?
A. 令和8年7月1日以降の申請では、社会保険加入の有無自体はW評点の審査項目から削除されています。ただし社会保険への加入は建設業許可の要件であり、未加入では許可自体を維持できません。
Q. 建設機械はリース契約でもW7の加点対象になりますか?
A. 自社所有の機械のほか、一定の要件を満たすリース契約の機械も対象になります。契約期間や検査記録などの確認資料が必要になるため、事前に準備しておくとよいでしょう。
Q. 自主宣言制度の宣言は、決算後に行っても間に合いますか?
A. 加点の条件は「審査基準日が宣言日以降であること」です。審査基準日は直前の決算日にあたるため、決算日より後に宣言しても、その期の審査では加点対象になりません。
7. まとめ
- W評点=W1〜W8の合計点数×8.75で算出、点数幅は-788点〜2,073点
- W1(担い手の育成・確保)が配点77点で最大、建退共・退職一時金・法定外労災はそれぞれ15点
- 令和8年7月1日改正で、社会保険関連3項目が削除、自主宣言制度(5点)が新設
- W2・W4には減点項目があり、加点だけでなく減点回避の管理も重要
W評点の中でも特に費用対効果が高い対策の優先順位は「経営事項審査(経審)の点数を上げる方法【優先順位】を専門行政書士が解説」をご覧ください。
行政書士法人スマートサイドでは、W評点の加点漏れチェックや、令和8年7月改正への対応状況の確認についても、事前予約制の有料相談で承っております。



